「まさか自分のサイトが」では遅い。士業のホームページを守るセキュリティ対策の基本5選
「小さな事務所のホームページなんて、攻撃されるわけがない」
そう思っている士業の先生方は少なくありません。しかし現実は、サイバー攻撃の多くは特定の標的を狙ったものではなく、世界中のホームページを無差別に自動スキャンして脆弱なサイトを探し出す手口です。事務所の規模や知名度は関係ありません。
士業のホームページが攻撃を受けた場合の被害は深刻です。依頼者の個人情報の漏えい・ホームページの改ざん・問い合わせフォームを悪用したスパム送信・訪問者へのウイルス感染など、事務所の信頼を根底から覆すトラブルにつながります。「法律のプロである士業の先生が、自分のホームページを守れていなかった」という事態は、取り返しのつかないブランド毀損になりかねません。
今回は、士業のホームページを守るために知っておきたいセキュリティ対策の基本を5つのポイントで解説します。
「もしもの時」に備える最後の砦 ─ バックアップ
どれだけ万全なセキュリティ対策を講じても、100%安全なホームページは存在しません。不正アクセス・改ざん・誤操作・サーバー障害など、予期しないトラブルが起きたときに事務所を守る最後の手段がバックアップです。
▼ バックアップとは
バックアップとは、ホームページのデータ(記事・画像・設定・データベースなど)を定期的に別の場所にコピーして保存しておくことです。バックアップがあれば、トラブルが発生してもデータを復元し、ホームページを元の状態に戻すことができます。逆にバックアップがない状態でサイトが改ざんされたり、データが消えてしまった場合、これまで積み上げてきたコンテンツや設定をすべて失うことになります。
士業のホームページで整えておくべきバックアップの基本:
・バックアップの頻度は「週1回以上」を目安にする
→ ブログを頻繁に更新する場合は毎日のバックアップが理想。更新頻度が低くても最低週1回は実施する
・バックアップデータはサーバーとは別の場所に保存する
→ サーバー上にだけ保存していると、サーバー障害やサイバー攻撃でサーバーごとやられた場合に復元できない。外部のクラウドストレージ(Google Driveなど)や別サーバーに保管する
・バックアップは自動化する
→ 手動で行うと忘れがちになる。WordPressではプラグインで自動バックアップを設定できる
・定期的に復元テストを行う
→ バックアップが正常に取れているかどうかは、実際に復元できるかを確認しなければわからない。半年に1回程度、復元できることを確認する習慣をつける
バックアップの自動化設定は初期構築時に制作会社に依頼しておくことで、その後は意識せずにデータが保護される状態を維持できます。
「入口」を守ることが防御の基本 ─ ログイン防御と権限管理

ホームページへの不正アクセスの多くは、管理画面へのログインを突破口として行われます。入口を堅固に守ることが、セキュリティ対策の最も基本的かつ効果的な施策です。
▼ ログイン防御とは
ログイン防御とは、ホームページの管理画面(WordPressの場合はダッシュボード)への不正ログインを防ぐための対策全般のことです。不正ログインの代表的な手口は「ブルートフォース攻撃」と呼ばれるもので、ロボットが自動的にIDとパスワードの組み合わせを大量に試し続けることで突破を図ります。
ログイン防御の具体的な対策:
・ログインIDに「admin」を使わない
→「admin」はWordPressのデフォルトIDとして世界中で広く知られており、攻撃者が最初に試すIDの筆頭。必ず別のIDに変更する
・推測されにくい強固なパスワードを設定する
→ 英大文字・英小文字・数字・記号を組み合わせた12文字以上のパスワードが目安。「事務所名+生年月日」のような推測されやすいパスワードは厳禁
・二段階認証を設定する
→ IDとパスワードに加えて、スマートフォンへの確認コード入力を求める認証を追加することで、パスワードが漏えいしても不正ログインを防げる
・ログイン試行回数を制限する
→ 一定回数以上のログイン失敗で一定時間アクセスをブロックするプラグインを導入する
・管理画面のURLを変更する
→ WordPressのデフォルトのログインURL(/wp-admin/ /wp-login.php)は攻撃者に広く知られている。URLを変更することで攻撃の入口を見つけにくくする
▼ 権限管理とは
権限管理とは、ホームページの管理画面にアクセスできるユーザーの役割と操作範囲を適切に設定・管理することです。スタッフがいる事務所や、制作会社のアクセス権限を設定している場合に特に重要です。
権限管理で押さえておくべきポイント:
・「管理者」権限を持つアカウントは最小限にする
→ 管理者は設定変更・プラグインの追加削除・他ユーザーの権限変更など、すべての操作が可能。不要なアカウントに管理者権限を与えない
・担当業務に必要な権限だけを付与する
→ ブログ投稿だけ行うスタッフには「投稿者」権限で十分。必要以上の権限は事故やミスの原因になる
・退職・契約終了したスタッフや制作会社のアカウントは速やかに削除する
→ 使われていないアカウントは不正アクセスのリスクになる。権限の棚卸しを半年に1回程度行う
・各アカウントに個別のIDとパスワードを設定する
→ 複数人でIDとパスワードを共有すると、「誰が何をしたか」の追跡が不可能になる
「穴」を作らないための継続的な対応 ─ 脆弱性対策と更新管理
セキュリティは一度対策をすれば終わりではありません。新たな攻撃手口が日々生まれる中で、ホームページのソフトウェアを常に最新の状態に保つことが、脆弱性を狙った攻撃を防ぐ最も効果的な方法です。
▼ 脆弱性対策とは
脆弱性対策とは、ホームページを構成するソフトウェア(WordPressのコア・テーマ・プラグインなど)に存在するセキュリティ上の欠陥(脆弱性)を修正・防御するための取り組みのことです。脆弱性とは、攻撃者がシステムに侵入したり・情報を盗んだり・サイトを改ざんするために利用できる「プログラムの弱点」のことです。
WordPressはオープンソースのソフトウェアであるため、世界中の開発者が常にセキュリティの問題を発見・報告しています。発見された脆弱性はアップデートによって修正されますが、アップデートを適用しないままでいると、その脆弱性を知っている攻撃者から狙われるリスクが高まります。
脆弱性対策として特に重要な施策:
・使用していないプラグイン・テーマは削除する
→ 無効化しているだけでも脆弱性の対象になる。使っていないものは削除が原則
・信頼性の低いプラグインやテーマを使わない
→ 公式ディレクトリ外の出所不明なプラグインは、悪意のあるコードが含まれている可能性がある
・WordPressの公式セキュリティプラグインを導入する
→プラグインで、マルウェアスキャン・ファイアウォール・不審なアクセスのブロックを自動化できる
・SSL証明書の有効期限を管理する
→ SSL証明書には有効期限があり、切れると「安全でないサイト」と表示される。自動更新設定を確認しておく
▼ 更新管理とは
更新管理とは、WordPress本体・テーマ・プラグインを定期的に最新バージョンに保つための管理作業のことです。更新通知が届いたまま放置しているホームページは、既知の脆弱性をそのままさらし続けている状態です。
更新管理で注意すべき点:
・更新は「必ずバックアップを取ってから」行う
→ まれに更新後に互換性の問題でサイトが崩れることがある。バックアップがあれば即座に復元できる
・WordPress本体・テーマ・プラグインの更新は順番に行う
→ 一度に複数を同時更新すると、問題が発生したときの原因特定が難しくなる
・テスト環境で確認してから本番環境に適用する
→ 重要なアップデートは、公開中のサイトに直接適用する前にテスト環境で問題がないかを確認する
・更新のスケジュールを決めて定期的に実施する
→「月に1回、第1月曜日に更新作業を行う」のようにルーティン化することで、放置を防ぐ
更新作業はシンプルに見えますが、互換性確認・バックアップ・テスト環境での検証など、適切に行うには一定の知識と手順が必要です。制作会社と「月次の保守契約」を結ぶことで、これらの更新管理を代行してもらう選択肢も検討する価値があります。
この記事のまとめ
士業のホームページを守るためのセキュリティ対策の基本5つのポイントは以下のとおりです。
- バックアップ:定期的な自動バックアップを設定し、万が一のトラブル時に即座に復元できる体制を整える
- ログイン防御:強固なIDとパスワードの設定・二段階認証・ログイン試行制限で管理画面の入口を守る
- 権限管理:必要最小限の権限設定と定期的な棚卸しで、内部からのリスクを防ぐ
- 脆弱性対策:不要なプラグインの削除・セキュリティプラグインの導入でホームページの弱点をなくす
- 更新管理:WordPress本体・テーマ・プラグインをバックアップ後に定期的に最新化し、既知の脆弱性を放置しない
セキュリティ対策は「何も起きなければ意味がない」と感じるかもしれません。しかしそれは、対策が機能している証拠です。一度でも不正アクセスや情報漏えいが起きてしまうと、依頼者への謝罪・行政への報告・サイトの復旧・信頼の回復に多大なコストと時間がかかります。
とはいえ、バックアップの自動化設定・二段階認証の実装・脆弱性スキャンの設定・更新管理の運用は、専門知識が必要な作業です。初期設定の段階でプロに依頼し、その後の保守・更新管理も制作会社のサポートを活用することが、最もリスクの低い運用方法です。
先生方の事務所が積み上げてきた信頼と依頼者の大切な情報を守るために、「ホームページのセキュリティ対策」はホームページ制作と同じくらい重要な投資です。後回しにせず、今すぐ現状の確認から始めてみてください。